《2009年を彩った映画たち》
映画館大賞2010は150館もの全国の独立系映画館からご投票を頂きました。映画館スタッフが選ぶ「スクリーンで観てもらいたい映画」ベストテンは2009年を代表する作品が並ぶ堂々たるラインナップになりました。
投票を集計していて『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』に対する劇場スタッフからの熱いコメントがまず目に入ってきました。上映時の劇場の一体感、上映終了後に巻き起こる拍手などなど、他の作品ではあり得ないお客さんからの率直な反応が多かったようで、特に若い劇場スタッフから感動の嵐。ある劇場では熱烈なファンの方がなんと60回以上ご覧になられていた!というコメントもありました。
上位作品の内容に目を向けてみると、2000年代が終わる節目の年に「引き継ぐ」「継承する」側面をもった作品多く、まるで映画がこの時代へ応答しているかのようです。『グラン・トリノ』は、身内にも頑な態度を一切崩そうとしなかった白人の老人が、ほとんど差別の対象にさえ思っていたアジア系の少年に自分自身を「譲り渡す」映画でした。『ディア・ドクター』はニセ医者がつとめていた村医者の仕事を、縁もゆかりもない駆け出しの医者が—結局二人の意志の疎通はうまくいかなかったけれども—「引き継ぐ」ことになります。『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』では、世界中から集められた若い優秀なダンサーたちやライブのスタッフたちに、最高のパフォーマンスを、そしてそれを生む為のスピリットを「伝えよう」とします。
観た人の支持が厚く劇場スタッフにも強く印象を残す作品には、映画館でしか味わえない瞬間を作品の中から見つけることが出来ます。それは必ずしもクライマックスのシーンとは限らず、案外物語とは関係のない瞬間だったりします。例えば、しかめっ面の老人の唸り声、白衣を身にまとって自転車でふらり夜道を走る後ろ姿、名前も知らない無数のバックダンサーたちの鮮やかな身振り。そういった何でもない一瞬は劇場でないと見逃してしまう気がします。観た人それぞれにとって大事な瞬間、自分だけの映画のワンカットが記憶に焼き付いてしまうことこそが、スクリーンで映画を楽しむ醍醐味ではないでしょうか。『愛のむきだし』は、一度観たら忘れられない、まさにスクリーンでしか味わえない瞬間ばかりをこれでもかと詰め込んで4時間圧倒してくれました。
映画館大賞が、かけがえのない映画の自分だけの最高の一瞬に一人でも多くの方に映画館で出会ってもらうきっかけになれば幸いです。
【映画館大賞実行委員より】