KAWASAKIしんゆり映画祭から川崎市アートセンターへ
――KAWASAKIしんゆり映画祭のことなどもお話していただけますか。
KAWASAKIしんゆり映画祭は今年で13年になりますね。最初に立ち上げたのは、今村昌平さんと日本映画学校の人々。毎年秋に開催しています。現在は地元のボランティアの人たちによって運営されている映画祭で、地域の人たちにも親しまれて、毎年多くのお客さんにきてもらっています。去年、新百合ヶ丘の駅のそばに映画の専門ホールを併設した「川崎市アートセンター」ができたのですが、しんゆり映画祭のスタッフがこの映像ホールの運営も請け負っています。
これを実現するまでは本当に大変でした。駅のすぐそばに、市が文化施設を立てるという約束のもとに10年以上前に地主さんが川崎市に提供した土地があって、川崎市に予算がなくて長いこと何も建てられないでいたんです。その話が何年か前に復活して、文化施設をつくる予算がついたというので、われわれの運動がはじまったわけです。わたし自身も「しんゆり・芸術のまち」作り推進委員会のメンバーのひとりだったものですから、どうしても映像ホールとお芝居小屋をつくってほしいと申請したんです。しかし、これが実現するまでには、いろいろな問題が、本当に山ほどあって、それでもなんとかクリアして、アルテリオ映像館とアルテリオ小劇場を併設した川崎市アートセンターが、2007年11月にオープンしました。
しんゆり映画祭では、映画祭の開催以外に、「ジュニア映画制作ワークショップ」という中学生に映画つくりを体験してもらうというワークショップもやっています。これは地元の日本映画学校や川崎市市民ミュージアムの協力を得て、夏休みに実施しているのですが、とても好評で傑作もたくさん生まれています。映画祭で賞を受賞した作品もあって、このワークショップに対する関心は高くて、市外からの取材などもたびたび受けることがありました。しんゆり映画祭はただの映画好きの人たちだけのイベントじゃないという評価もいただいて、そういう布石もあったので、川崎市も、アートセンターの中に映像ホールをつくろうというふうに動いたのだと思います。
アルテリオ映像館は、文化施設の中の映像ホールといっても、毎日4回上映する映画館(ミニシアター)として運営しています。日本で初めての公設映画館、ある意味では理想的なコミュニティシネマとして、全国的にも注目され、期待されていますから、興行的にもある程度は成功させなければいけないと思っています。
いま、私自身はプログラム・アドバイザーとして関わっていますが、エレベーターの中でお年寄りなんかと乗り合わせたときに「このホールができて、私にはほんとうに生きる楽しみができました」と言われると、本当に嬉しいですね。
アルテリオ映像館は映画館ですから、基本的にはロードショー的なプログラムを組みますが、公共の映画館ですから、それ以外にもいろいろな特集や特別な上映のプログラムを組んでいきたいと思っています。昨年、私は山形国際ドキュメンタリー映画祭でコミュニティシネマ賞の審査員というのをやりまして、中国のフォン・イェン監督の『稟愛』という作品に賞を授賞しました。あのドキュメンタリーもこの映画館で是非ともやりたいなと思っています。それに、すぐそばにある日本映画学校の卒業生の新作やそれ以外でも若い人たちの世に出ることの少ない秀作を上映できたらいいなと思っています。私自身が日本映画で人生を生きてきたので、やはり、日本映画の発展に貢献するような映画館にしていきたいなと思います。
この間、澤登翠さんの活弁付でD・W・グリフィスの『東への道』を上映したのですが、お年寄りだけでなく、若い人もたくさん来てくれて、その彼らが『東への道』のあの最後の流氷のシーンにびっくりしているんですね。いまは、地域から映画館がなくなってしまって、映画館で映画を見る習慣というのが失われてしまっていますね。でも、いくら家庭用の受像機が大きくなってDVDの画質がよくなっても、映画館の暗闇で見なければ、映画のほんとうの値打ちはわかりませんよね。そのためにもなんとか、子どもたちや若い人たちを映画館に来させなければいけない、映画の素晴らしさを伝えなければいけないと思っています。最初は、そんな教育的なことは考えていなかったんですけれど、映画館ができてみると、それがどんなに大切なことかということがわかりましたね。
白鳥あかね(しらとり・あかね)
昭和7年東京生まれ。早稲田大学文学部卒。新藤兼人監督の『狼』でスクリプター助手を務め、昭和30年日活入社。中平康、齋藤武市、今村昌平、熊井啓、藤田敏八、神代辰巳、根岸吉太郎監督をはじめ、多数の作品に関わってきた。曽根中生監督『わたしのSEX白書・絶頂度』などの脚本家としても活躍。平成8年、スクリプターの地位向上を目指し、共同組合日本映画・テレビスクリプター協会設立に尽力し、副理事長を務める。あきた十文字映画祭顧問、KAWASAKIしんゆり映画祭実行委員長を務めるなど、映画製作だけでなく広く映画普及に寄与した功績により平成16年文化庁映画賞映画功労表彰部門を受賞している。現在、川崎市アートセンター映画・映像事業企画・作品選考委員。







