~映画とカルチャー~

【書評】『ドキュメンタリーは語る 作家インタビューの軌跡』

山形国際ドキュメンタリー映画祭の刊行物「Documentary Box」に掲載された、日本を代表する作家26人のインタビューの単行本化。現実にカメラを向け続ける彼らの生の言葉は重く、面白い。(村山匡一郎)

文:村山匡一郎

2008-11-17 UP

documentarysakka 山形国際ドキュメンタリー映画祭が 1992年から15年間にわたって刊行してきた「 Documentary Box 」という冊子がある。日本のドキュメンタリー作家の活躍とその歴史を海外に発信するため日本語版と英語版で刊行され、毎号、研究論文のほか、ドキュメンタリー作家たちへのインタビューを掲載してきた。そのインタビューをまとめて改めて構成したのが本書である。

 ドキュメンタリー映画はこのところ、若い世代からを含めて熱い視線を浴びている。それはおそらく、さまざまな領域で格差が広がりつつある今日の社会を背景に、劇映画とはまったく異なった魅力を持った映画であることが知られてきたからだろう。そうしたドキュメンタリー映画の魅力とは何かということを、ここでは創り手たちの言葉を通して生き生きと伝えてくれる。それぞれの作家たちの生い立ちや製作現場の裏話を含めて、時には優しく、また時には鋭く紡ぎ出される言葉から、現実に対してカメラを向けることの重みや面白さが立ち上ってきて読み応えがある。

 確かにドキュメンタリー映画は幅が広く、それぞれの作家たちのドキュメンタリーに対する思いも考えも違っている。だが、彼らが現実に対してカメラで向かい合う姿勢は、驚くほど似ている。面白いのは、最初はドキュメンタリー映画を見たことも知識もなく業界に入った作家たちや、最初は劇映画志向だった作家たちの言葉である。そんな彼らが次第にドキュメンタリー映画にのめり込んでいく姿に、ドキュメンタリー映画の魅力を改めて知らされる思いがする。

 本書は、たとえば「岩波映画と出身監督たち」「孤高の監督たち」といったテーマで8部構成になっているが、同時に日本のドキュメンタリー映画の歴史を俯瞰できるように並べてある。この縦糸と横糸から取り上げられているのは、古くは「プロキノ」の作家たちから、新しいところでは是枝裕和、土屋豊、河瀬直美まで、全部で26人の作家たち。生前の講演を掲載した亀井文夫を除くと、すでに亡くなっている作家は残念ながら不在だが、インタビュー後、小森静男、能登節雄、土本典昭、黒木和雄、佐藤真、柳澤壽男、松川八洲雄ら、多くの作家が今日までに鬼籍に入られた。その彼らの証言はまさに貴重なものになっている。

 ドキュメンタリー作家に関する書物は、これまでそう多くは見当たらない。本書のように、数多くの作家たちの言葉からドキュメンタリー映画の魅力を探る本は珍しい。日本のドキュメンタリー映画の歴史と現在を知る上で有意義な一冊といえる。

『ドキュメンタリー映画は語る 作家インタビューの軌跡』

山形国際ドキュメンタリー映画祭東京事務局編/未來社/2006年/A5判494ページ/税込5040円

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