映画作りの醍醐味とは
——映画は異分野だという感覚はありましたか。
「最初だけですね。『なんでこんな画を撮らなきゃいけないんだ』と異分野出身の監督にぶつかってくるカメラマンがいるとか、いろいろ映画界の怖いウワサは聞いていましたけど、実際にはそういう目に遭ったことはないです。最初に作った映画(2000年のシティーボーイズのライブで上映した短編『まぬけの殻』)のカメラマンが亡くなった篠田昇さんだったのですが、ものすごい許容力を持って接してくださって。僕が出すアイデアを面白がってくれて、助手さんが『それでは写らないですよ』などと言うものなら『写るようにするのがカメラマンの仕事だろ!』と言うような人でした。最初からスタッフに恵まれていましたね。また、僕が映画を撮り始めた時期が、映画界そのものが変わっていった頃だと思うんです。デジタル化が進んだことで、スタッフも昔ながらの職人さんばかりではなくなっていった。スタッフの中には、僕らがやっていたテレビ番組を観て育った世代もいましたし。僕が撮れたのは、そういう変化も大きかったと思います」
——テレビ、舞台など、様々な分野で活動されてきた三木監督にとって、映画を作る醍醐味とは何でしょう。
「そうですね……。醍醐味のひとつは、ある種のドキュメンタリーを作るような面白さというか、監督として、スタッフ・役者を含めた集団が持っている『こういうものが面白いんじゃないか』という思いをつかまえる面白さだと思います。
たとえば最初にお話しした『なぜハナメがアジテートして終わる映画になったのか』ということは、分析すればいくつかの道筋が見つけられるけど、最初は単純に『これは面白いんじゃないか』と思ったところから始まっているわけです。その思い付きが、いろんな人の手を経て映画になっていく、そのプロセスを体験するのが面白いですね。映画を撮ることがひとつの体験になっているというか。予想していなかったものが出てきた時に、それを“不測の事態”だと思うと大変な感じがするけど、“これも体験だ”と思うと楽しいじゃないですか?」
——そしてその体験が次の作品につながっていくと。
「創造って、そういうものだと思います。黒澤明監督が、創造の源泉は記憶や体験にあると言っていますが、自分の記憶や体験が変なところで結びつくのが面白い。自分の体験や記憶ではなく、技術論だけでも映画を作れるプロフェッショナルな監督はいらっしゃるのでしょうが、僕はそのような天才でも職人監督でもない。ある種、趣味でやっているようなものなので、(映画作りに対して)鮮度が感じられなくなったら自分はダメになると思っています。体験の中から、何かやりたいこと、新しいものが見つかる限りは、映画を作っていきたいと思いますね」
三木聡(みき・さとし)
1961年神奈川県生まれ。「ダウンタウンのごっつええ感じ」「笑う犬の冒険」「トリビアの泉」「TV’s HIGH」などの人気バラエティ番組や、シティーボーイズのライブの作・演出などを手掛ける。映画は本文中に登場する作品のほか『イン・ザ・プール』(05)を発表。国内のみならず、海外でも特集上映が組まれるほどの人気を誇っている。
『インスタント沼』
監督・脚本:三木聡
出演:麻生久美子、風間杜夫、加瀬亮、松坂慶子ほか
あらすじ:編集長を務めていた雑誌が休刊になり、出版社を辞めた沈丁花ハナメ。ゼロからやり直そうと身辺整理をする中で、実の父親の存在を知り、唯一の手がかりである住所を訪ねて行くが、現れたのはうさん臭い骨董屋店主。店主の突飛な言動に振り回されながら、自身も骨董屋を始めるハナメだったが……全国劇場にて公開中
オフィシャルサイト:http://instant-numa.jp
(C)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ








