~今、観るべき新作~

『イエローキッド』真利子哲也監督インタビュー

短・中編の旗手として名を馳せる真利子哲也、待望の長編デビュー作『イエローキッド』。既に単発の上映会や映画祭で熱い注目を浴びているこの作品が、このたび全国の独立系映画館のネットワーク“シネマ・シンジケート”の「New Director / New Cinema 2010」に選出され、最も将来が期待される新人監督作品として全国順次公開されることが決まった。その奇想天外な発想はどこから来るのか? パワフルな演出の秘密とは。

2009-12-18 UP

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自主映画の可能性

――『イエローキッド』は、藝大で学んだ2年間の集大成といえますか?

特にそういう意識で作ってはないですね。もともと修了制作を撮るために藝大に入ったので、そのためだけに色々乗り越えてきました・・。藝大の修了制作は必ず劇場でかけられると聞いていたので、劇場の大きなスクリーンで上映されるということを強く意識しました。具体的には、アメコミの色が映えるとか、主人公をボクサーにすることでアクションが生まれるといったことです。

――修了制作を撮るのが目的だった?

自主映画でも劇場でかけられるクオリティーのものを作るのが目的だったんです。学校の機材が使えて、200万円の制作費が支給される環境は他にないですから。あとは同年代の人と映画を作りたかったというのもあります。これまで一人で作って、映画祭をまわる時も一人だったので、仲間と来ている他の人たちが羨ましかった(笑)。
この2年間の経験が今後どう活きてくるのかは、まだ自分ではわからないですね。映画作りの姿勢については、外の仕事で学んだことも多いです。僕はメイキングを撮る仕事が多いのですが、『イエローキッド』のすぐ後に入った小林政広監督の現場でもカルチャーショックを受けました。仲代達矢さんが主演でしたので、意識的にそうされたのかもしれませんが、監督が中心の黒澤明組のような現場で、そのやり方のすべてが正しいかどうかはともかく、自分でもそういうふうに映画を作ってみたいと思いましたね。

――これまでに影響を受けた監督は?

岡本喜八さんです。無意識でも、漫画を取り入れたのは、岡本監督の『江分利満氏の優雅な生活』(63)の影響もあるかもしれないです。『イエローキッド』をユーロスペースの修了制作展で上映した時、岡本監督を意識して上下黒の格好で行きました。誰にも気づかれなかったけど(笑)。岡本監督や中平康監督らの、撮影所時代の乱発の中でも、きちんと娯楽として成り立っていながら、それぞれの監督の方法論で作られた作品が好きですね。最近だと韓国の監督が日本のあの時代の映画を意識しているのか、特に役者が大きな芝居をして評価されているのを見ると、今だからこそという気持ちもあります。

――では最後に、一般公開に向けた意気込みをお聞かせください。

自主映画でありながら劇場でかかることを意識して作ったと言いましたが、以前石井聰亙さんが、あるHDVカメラのシンポジウムで、自分たちの時代は8mmフィルムで、プロとは一線引いて映画に挑んでいたが、今は機材的にもその差がなくなってきた、と話されていました。ぼくも8mm小僧でしたので、すごく胸が踊ったのを覚えています。これまでの自主映画のイメージを打ち破る、劇場で堂々と“映画”として上映される自主映画。『イエローキッド』がそのパイオニアになればいいなと思います。

mariko2真利子哲也(まりこ・てつや)
1981年東京生まれ。法政大学在学中から8mmを愛好し、個人映画に感銘を受けつつ映画制作を開始。2003年に『極東のマンション』で13の映画祭から招待され、ゆうばりファンタスティック映画祭オフシアター部門グランプリをはじめ、7映画祭で受賞したことで一躍注目を浴びる。翌年に発表した短編『マリコ三十騎』では、世界で最も歴史のあるオーバーハウゼン国際短篇映画祭・映画祭賞を受賞、ロッテルダム映画祭など18の映画祭から招待され、2年連続となるゆうばり映画祭を含む9映画祭で賞を獲得して国内外から高い評価を受ける。
その後、冨永昌敬・松尾スズキ・小林政広などの監督作品にメイキング・ディレクターとして参加。また2007年に東京藝術大学大学院映像研究科に入学して黒沢清監督に師事、2009年に修了作品として監督した初の長編映画『イエローキッド』が、バンクーバー国際映画祭に招待された。

『イエローキッド』
2009年/日本/106分/1:1.85 
監督・脚本:真利子哲也
出演:遠藤要、岩瀬亮、町田マリー、波岡一喜、玉井英棋
配給:ユーロスペース
公式サイト http://www.yellow-kid.jp/
2010年1月30日よりユーロスペースほか全国順次公開


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