~今、観るべき新作~

【新作レビュー】とにかくハッピーなお伽噺『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

『ライフ・イズ・ミラクル』以来の新作長編は、かつてないほど無軌道で、シニカルで、底抜けに楽しいクストリッツァ節が唸る唸る!(久保玲子)

文:久保玲子

2009-08-23 UP

【新作レビュー】とにかくハッピーなお伽噺『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

そしてクストリッツァ映画には欠かせない常連、ミキ・マノイロヴィッチが暴れまくって、期待通りにブラックな笑いを振り撒いてくれる。彼扮するマフィアは、なんとニューヨークのワールド・トレード・センターそっくりのツインビル建設を準備中。ブッシュこそ登場しないが、本作にはアメリカ型のグローバリズムに対するシニカルな視点が点在する。かつて政治的視座からパワフルな傑作を生み出した鬼才だが、本作では政治批判にとらわれることなく、過激なジョークの形でそれらを挟み込みながら映画作りを楽しむ余裕を見せつける。お馴染みのウンザ・ウンザ・ミュージックに載って展開するそのテンションたるやすさまじく、悪党たちはケダモノと化し、銃撃戦あり、獣姦ありと何でもござれ。そんな悪辣非道な輩に行く手を阻まれ、ヤスナを奪われそうになるツァーネだが、おじいさんから受け継いだ大胆さ、まっとうさを武器にひるむことなく、凸凹兄弟やツァーネのおふくろさんにピンチを救われながらハッピーエンドに向かって突き進んでゆく。
ウェディング・ベルを鳴らせ!やがて聖ニコライのイコン、自分へのお土産=ステキな出会い、未来の嫁さんという、おじいさんとの3つの約束を揃えて村に凱旋するツァーネをもうひとつのサプライズが待ち受けている。破滅に向かう現代社会のシニカルなアレゴリーの中、鬼才クストリッツァは信じる心、人との出会い、そして家族の価値を陽気に謳い上げながら、見る者をとにかくハッピーなお伽噺に叩き込んでくれるのである。

『ウェディング・ベルを鳴らせ!』

2007年/セルビア共和国・フランス合作
監督・脚本:エミール・クストリッツァ/出演:ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ、マリヤ・ペトロニイェヴィッチ、アレクサンダル・ベルチェック、ミキ・マノイロヴィッチ、リリャナ・ブラゴイェヴィッチほか

オフィシャルサイト:http://www.weddingbell.jp


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