~インタビュー・対談・往復書簡~

トム・リン × チェン・ヨウチェ 新鋭監督2人が語る、台湾映画の過去と未来

侯孝賢らが中心となったニューウェーブから20年あまり、台湾の30代監督の作品が一般観客の支持を集めている。彼らが作る映画の特徴とは? 日本でも注目度急上昇中のトム・リン(林書宇)とチェン・ヨウチェ(鄭有傑)が語る。

取材・文:藤野眞功 写真:岩根愛

2009-09-28 UP

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厳しい現状が生み出す、友情と共闘

――冒頭で仰っていたトム・リンさんが『一年之初』の助監督をお務めになったという話をもう少し詳しくお聞きしたいです。それは、最近の台湾では一般的なスタイルなのですか。

トム カメラマン、照明、美術のスタッフなどを共有することは珍しくありません。ヨウチェ君の場合は、俳優の才能があるので僕の映画に出てもらいました。僕の場合は、助監督としての才能があったということかな?

ヨウチェ 現場は、ほとんど任せていたよね。やっぱり、僕は経験が少なかったから、全部を自分で指揮することは物理的に不可能だったので。

トム 台湾の若手監督は多くが、第二の専門分野を持っています。例えば、ある監督が別の映画では音楽を担当していたり、カメラマンをやっていたり。それがヨウチェ君の場合は、俳優であるということなのですが。

ヨウチェ ようするに暇なんですよ。自分たちでこういう言い方をしていいのか分りませんが、監督だけでは食えないんです。だから、時間もあるし。今後、皆がひとり立ちして、毎年一本、自分の作品を撮れるような状況になった場合は、それだけで手一杯で仲間を助けることは叶わないでしょう。でも、今は時間があるから助けにいける。

――なるほど。では、最後にお二人の作品について、日本の観客にプレゼンをお願いします。まずは、トム・リン監督の『九月に降る風』。

トム 台湾の若者は映画、ドラマ、小説、漫画などを通じて日本社会や日本の若者の青春をある程度、理解しています。ですから、それとは逆のパターンで日本人の方々にも、台湾の若者の青春、成長の過程を知ってもらいたい。楽しんでもらえると思います。

ヨウチェ 『九月に降る風』は、90年代に高校生だった皆さんには大きな親しみをもって観てもらえる作品です。失われたものがスクリーンに甦り、絶対に戻れない時期だと頭では理解しつつも、何かを感じるというか。

――では、チェン・ヨウチェ監督の『一年之初』については?

ヨウチェ デビュー作で野心的。こういう映画は、もうこれっきり、二度と撮れないでしょう。撮影当時の僕の頭の中には、一つで一本の映画になる幾つもの物語があって、でもこの映画以降にそのチャンスが回ってくるとも限らない。そういうつもりで、持てる力をすべて注ぎ込んだ作品です。

トム 形容し難い映画なんですよ。台湾の若者の絶望と希望、未来に対しての不安を描いた、すごく自由な作品だと思います。

ヨウチェ わがままな映画だよね。

トム それじゃあ、推薦にならないよ(笑)。

ヨウチェ ああ、そっか(笑)。でも、自分の子供みたいなものだから。なんというのかな、未熟だし、満足していない部分もあるけど、もう正直な、本当に正直な映画なので、縁があれば、ぜひ観て欲しいです。

tom2トム・リン(林書宇)
1976年台湾、新竹市生まれ。台湾とアメリカで育つ。台北の世新大学映画科在学中の97年に初短編『臭覚』を発表、台湾金馬奨(台湾アカデミー賞)短編賞候補に。その後、カリフォルニア芸術大学映画・ビデオ科で学び、在学中の02年に短編『跳傘小孩』がヴァンクーバー国際映画祭タイガー&ドラゴン部門に出品される。帰国後の05年に短編『海岸巡視兵』を発表、台北電影節グランプリに輝いたほか、数々の国際映画祭で高い評価を受けた。監督として活躍する一方、ツァイ・ミンリャン監督の『西瓜』(05)、周美玲(ゼロ・チョウ)監督の『刺青-tattoo』(07)などの助監督も務めている。kugatsumain

『九月に降る風』(原題『九降風』)

90年代後半、台北近郊の街、新竹。野球好きの男子高校生7人がグループを結成し、自由きままな日々を過ごすが、あることがきっかけで仲違いしてしまう。監督の自伝エピソードをもとに、思春期の不安定な心模様を描く青春群像劇。第45回金馬奨・最優秀オリジナル脚本賞、2008台北電影節・最優秀新人賞ほか4部門受賞。
監督・脚本:トム・リン/出演:リディアン・ヴォーン、チャン・チエ、ワン・ポーチエ、チウ・イーチェン/2008年/台湾/107分(C)2008 Mei Ah Entertainment Group
全国順次公開中 http://www.9wind.jp

hiroチェン・ヨウチェ(鄭有傑)
1977年台湾、台南市生まれ。台湾大学入学後に自主映画制作を始める。00年に初短編『BABY FACE』を自らの主演で完成させ、高い評価を得る。01年、短編『シーディンの夏』(原題:石碇的夏天)で金馬奨最優秀短編賞を受賞。同作はヴァンクーバー、ハワイ、釜山など世界各国の映画祭に招待され、日本では東京国際映画祭「アジアの風」で上映された後、劇場公開もされた。09年、人気女優のチャン・ロンロンを主演に迎えた長編2作目『ヤンヤン』(原題:陽陽)を発表し、台北電影節で審査員特別賞と主演女優賞を受賞。『ヤンヤン』は今年の東京国際映画祭「アジアの風」でも上映される。doovermain

『一年之初(いちねんのはじめ)』

もし人生をやり直せるチャンスを与えられたら——。大晦日の24時間。映画監督、不法移民、裏社会のボスなど男女7人の5つの物語がパラレルに進行する。やがて明らかになる彼らの関係。衝撃の結末。はたして彼らが望んだ再生とは? 2006台北電影節グランプリ・観客賞受賞。
監督・脚本:チェン・ヨウチェ/出演:クー・ジャーヤン、モー・ズーイー、クー・ユールン、チャン・ロンロン/2006年/台湾/113分
10月3日より新宿バルト9にてレイトショー http://www.t-joy.net/doover


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