~インタビュー・対談・往復書簡~

『リミッツ・オブ・コントロール』ジム・ジャームッシュ監督インタビュー「ひらめきは万物の中に」

幻惑に満ちたスペインを彷徨う、名もなき男。制限なしのイマジネーションが炸裂するジャームッシュ最新作は、原点回帰か、それとも新たな到達点か。解釈のヒントがちりばめられたロングインタビューを一挙掲載。

2009-09-16 UP

クリストファー・ドイルの撮影術

——(ジャームッシュの映画には初参加の)クリストファー・ドイルとの仕事はいかがでしたか?

jarm6クリスとは昔からの友達で、いつか一緒に仕事しようと話していたんだ。数年前に、ジャック・ホワイトのバンド「ザ・ラカンターズ」の「ステディ・アズ・シー・ゴーズ」のミュージックビデオを一緒に作った。今回は台本もショットリストもないので、撮影前に本当によく話し合ったよ。色、フレーム、照明、カメラの動き、出演者の動き、イメージ、スタイルなどについてね。クリスは本当にアイデアが豊富で、「これがダメならあれは?」と次々に出てくるんだ。

撮影中に気がついたんだけど、クリスはセットの中で、その場所を明るくするためではなく、むしろ影を作るために照明を使っていた。ポジティブな部分とネガティブな部分の対比の認識を逆転させたんだ。たとえば日本では人が床に座るけど、その時は部屋がポジティブな場所と認識され、その部屋にあるテーブルや椅子の上はネガティブな場所だと捉えられる。同じ場合でも欧米人は逆の認識を示すんだ。同じコンセプトでこんな例もある。海の浮かぶ船の絵があったとすると、アジアでは船はすごく小さく、海は非常に大きく描かれることが多い。でも欧米の絵ではほとんどの場合、海は船の周りを囲んでいて、船は構図の中心に据えられている。

ジャームッシュ・スタイル

——今回の映画では、登場人物たちが同じ台詞や似たような動作を繰り返し行いますが、これはどのような狙いなのでしょう?

僕にとっては、「繰り返す」ということではなく、バリエーションが重要だった。アンディ・ウォーホールの作品をはじめとするアート、ファッション、音楽と同じように、映画でもバリエーションという手法は有効だ。『ミステリー•トレイン』では3つ、『ナイト・オン・ザ・プラネット』では5つ、『コーヒー&シガレッツ』でもいくつかのバリエーションをつけている。僕はバリエーションという手法が好きなんだよ。

——あなたの映画ではいつも、印象的なシーンでコーヒーとタバコが出てきますが、あなたにとって必要不可欠なアイテムなのですか?

それらは日常生活の中で最も頻繁に使用されるドラッグだと思う。砂糖も同じ。コーヒーは86年から飲んでないが、紅茶はよく飲むよ。そこには個人的な考えは含まれていない。タバコやカフェインは、僕にとってドラッグ。良くもなければ悪くもない。でもパワフルだ。タバコは健康を害するものなのに、頭が良い人までタバコを吸っている。ちなみに僕もタバコを吸う。

——一方、今回の作品では、これまでにはなかった大掛かりなアクションシーン、あなた自身が他のインタビューで「マイケル・ベイ的」と言っていたヘリコプター・シーンが出てきます。

jarm7確かにマイケル・ベイのようなヘリコプター・シーンはあるけど、1シーンだけだね。最近の特にアメリカ映画には飽き飽きしているんだ。彼らは、観客が次の展開を予想できるように映画を作っている。つまらない。『リミッツ・オブ・コントロール』では、観客が予想できてしまう部分を省いた。アクション映画なのにアクションがない。それぞれの役には名前もないし、生い立ちの情報もない。リベンジ、暴力も出てこない。そんなものがなくても素晴らしくて美しい映画はたくさん存在する。僕にとっては、予想できない映画の方が心に残るし、感動するんだ。


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